成長を続けるガーナ
市川陽子
ガーナの経済成長率は今や世界一とも言われおり、2011年第二四半期の経済成長率は34%を記録した。実際に首都アクラでもいたるところで建設中のビルや道路が出来ていて、目に見えて経済成長している様子を感じる。近代的なビルが立ち並び、道路は車の渋滞が激しいアクラであるが、同時に至る所に子ヤギが走り回っていたりと、田舎っぽさも混在している。



昨今のガーナの経済成長を促進する主な要素は3つある。
- 金
ガーナは1957年の独立以前はイギリス領ゴールドコースト(黄金海岸)と呼ばれていた。昔から金がとれるが、昨今の金高騰により再びゴールドラッシュが起きている。
- カカオ
ガーナと言えばカカオが有名であるが、カカオ輸出で世界1位のコートジボワールでの情勢不安によるカカオ輸出量の低下に伴い、ガーナのカカオの需要が高まったことに加え、カカオ農場での児童労働問題がドナー国に避難されたことを受け、ガーナ政府はカカオの公定価格を引き上げたことにより、カカオの価格も高騰している。
- 石油
2007年に沖合で石油が取れることが分かり、世界中からガーナへの資本投資が集中した。2011年にはガーナでの石油精製と出荷も始まり、石油精製技術の向上や石油による収入の分配等の課題も多いが、ガーナは石油発見により経済成長が著しく促進された。
しかし、経済成長は著しいのもの実際には多くの問題や課題も抱えている。環境配慮の視点が追いついておらず、下水整備、産業廃棄物管理が整っていないため、生活排水も工場排水もすべて海に垂れ流しで海洋汚染が進んでいる。
また、雇用機会が少ない。都市化が進み、首都や地方都市などに人口が集中しているが、工場などの雇用を受け入れられる場所が少ないために、特に若い世代が高校、大学を出ても仕事がない。政府は若者雇用促進の政策を実施しているものの、体力も気力もある若い人材が路上で物売りをしながら日々過ごしている。
それら若者によるアクラの路上物売りを観察していると非常に興味深い。アクラでは渋滞が当たり前で、本来30分もあれば行ける場所でも朝夕の通勤時間では1時間かそれ以上の時間がかかる。アクラ郊外に住む人は更に大変で、車で3~4時間かけて車で通勤しているような人も多い。夕方4時に職場を出ても、夜8時に家に着くというのはよくある話。渋滞すると帰り道に買い物などで道をそれることも難しく、腹も減る。なので、路上での物売りのニーズが高まるのである。
幹線道路で渋滞している車の脇をありとあらゆる品々を頭や手に乗せ練り歩く。水、飲料水、ピーナツ、チップス、クッキーなどの軽食から、スイカ、パパイヤ、サトウキビ等のフルーツなどは序の口で、車用品(ハンドルカバー、反射板、座席シート等)、携帯用品(携帯のプリペイドカード、携帯カバー、充電器等)、子供用のおもちゃ、新聞、ビジネス本、ファッション誌、巨大な地図、額縁に入った絵、掛け時計、包帯、筋トレ器具、体重計…そんなものまで売っているの!?という物が多く新鮮な驚きを与えてくれる。しかも、顧客は車に乗っているので車が進み始めると、物売りも猛ダッシュしながら追いかけ交渉する。体力のいる仕事であり、交通事故と常に隣り合わせの危険な仕事であるが、日々の収入は想像の範囲内であろう。
さらに、クリスマスシーズンを迎え(現時点でまだ1ヶ月以上も先だが)、地方からの買出しや売り込みの為に車の渋滞はさらに悪化している。そこで、路上物売りの人数も商品の品ぞろえも増え続けており、活気に溢れている。毎日の通勤時間の物売り観察が楽しくて仕方がない。

路上物売りが渋滞の車の間に連なって歩いている。手前の男性は、ヘッドホン、ランプ、筋トレマシーン、バッテリーをつなぐケーブル?を売り歩いている。