グアテマラについて思い浮かぶもの
調査部 研究員
西崎 紘史
「グアテマラ」という言葉を聞いて、皆様が連想されるものは何でしょうか。
2010年9月、専門家業務支援と関連情報収集調査のためにグアテマラを訪れたのですが、滞在を通してその問いに対する新しい答えを常に確認し続けたような、興味深い出張となりました。
<グアテマラという国>
グアテマラ共和国は、韓国とほぼ同等の広さの国土を持つ、人口約1,400万人の中米の国です。1960年から36年間続いた内戦の影響が行政システムや治安等、随所に残っていることもあり、生活水準は高いとは言えず、全国民の約半数が貧困層に属しています。特に高原地帯では小規模農業に従事する人が多く、その暮らしは極めて質素です。
自然に関しては、世界遺産に登録されている見所が各地にあり、中でもマヤ文明の都市群で最大規模を誇るティカル遺跡は国際的な観光地となっています。マヤ遺跡というとメキシコが有名ですが、グアテマラでも見られることをご存じの方は少ないのではないでしょうか。中米一深く、巷では世界で一番美しい湖と言われるアタトゥラン湖も名所の一つです。
また、国鳥であるケツァールがそのまま国の通貨名になっているのも珍しい点と言えるかと思います。(ちなみに、数えやすかったために現地ではついつい「5ケツ、100ケツ…」と略して数えてしまっておりました。)

<グアテマラ人のパーソナリティ>
これまで中南米にまったく馴染みのなかった私にとっては、中南米人と聞くとブラジル・アルゼンチン等を筆頭とした南米の「とにかく陽気・ブロンド美男美女揃い」といったステレオタイプの勝手なイメージを持っていました。
しかし、グアテマラでは純粋なヨーロッパ系の人はほぼおらず、大半がヨーロッパ系とインディヘナ(先住民族)の混血か、マヤ民族の流れを汲むインディヘナです。その背格好・顔付きはどちらかと言うとアジア人に近く、パーソナリティも素朴な趣きの人々と会う機会が多かったため、従来のイメージは一気に覆りました。
とはいえ、街中至る所で遭遇した、日本では滅多にお目にかかることができないような屈託のない笑顔・フレンドリーな対応の数々は、素朴とはいえ自分がラテンの国に来ている事を実感させるには充分なものでした。

<経済・産業>
最初の質問に対する最も多い答えは「コーヒー」かもしれません。
グアテマラの主な産業は製造業、農林水産業、観光業、食品加工業等ですが、なかでもコーヒー、砂糖、バナナ、カルダモンの伝統産品はグアテマラ全体の輸出額の約3割を占めています。日本でも、高品質のコーヒーは商社が仕入れた後に缶コーヒー等へ形を変えており、日本での知名度向上に一役買っているものと思われます。
また、出張前後に発生した土砂崩れ等からも顕著な主要流通インフラの未整備、外国企業投資増加のための治安対策等、産業発展への阻害要因はいくつも考えられるのですが、これは言葉を変えれば充分な伸びしろを残しているという事でもあり、今後の解決・発展が期待されます。

<グアテマラの開発援助>
開発援助の側面からの傾向として挙げられるのは、他の開発途上国と同様、総選挙ごとに政権が代わり、政策や現地で一緒に業務を行うカウンターパートの人達もそれを受け大幅に変更になってしまうという点です。一貫した政策・中長期計画に基づいた援助を行うことは、現地側の自立発展性確保の観点からも重要な要素ですが、政治的な問題も絡み一個人・一組織レベルで対応できるレベルを超えているため、そういった状況が効果的な援助の妨げとなっているのはある程度致し方ないものなのかもしれません。
ともあれ、今回グアテマラを訪れる事になったのも貴重な縁と捉え、今後「グアテマラ」と聞いて色々な言葉が出てくる位に魅力的な国へ発展することを願いながら、これからを注意深く見ていきたいと思います。