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2009.12.29

「サモア良いとこ、一度はおいで!」

太平洋廃棄物管理プロジェクト 廃棄物管理研修専門家

 野田典宏

  1. プロジェクト

太平洋の広い、広い地域に小さな島々が点在している。生活し生きてゆくとゴミは出る。しかしゴミ捨て場は限られている。しかし広い海に捨てればせっかくの観光客にゴミをさらすことになる。海もきれいで気候はいいが、そうなると彼らは再び戻っては来ないだろうし、悪評で観光客激減となる。こうした状況のもと日本が2006年に「太平洋廃棄物管理改善プロジェクト」を開始し、来年5月で関係者に賞賛されつつ終了する。JICAは現在その次期プロジェクトを模索中である。

あくまでも青く透明な海
大きな収入源の観光産業

私はその最終段階の廃棄物専門家として、今年8月より約半年間の業務のため現地派遣中である。3度の派遣のうち、12月に2度目を終了し、2010年1月より最終派遣となる。主な任務は、現行プロジェクトの最終評価と次期プロジェクトの立上げである。派遣先は「太平洋環境計画(SPREP)」という小さな国際機関で、数名のスタッフと仕事をしている。

プロジェクト対象国はサモアだけでなく、クック島、ミクロネシア、フィジー、キリバツ、マーシャル島、ナウル、ニウエ、パラオ、PNG、ソロモン、トンガ、ツバル、バヌアツである。皆さんはいくつご存知で、位置はお分かりだろうか?私も初めはわからなかった。広い太平洋にゴマ粒のような小さな国々があり、産業は農業と漁業以外になく、気候がよく観光収入が大きい。それでも経済規模は小さく、出稼ぎ収入が重要である。一方で生活が豊かになるとゴミも増えるというジレンマを抱えている。これまではその廃棄物対策は皆無であったが、日本が「福岡方式」という、安価で自立可能、かつ継続的な処分場による改善策を提案し、サモアを中心に採用されつつある。

それにしても溜まるゴミ
そこで福岡方式の処分地
  • 人々と生活

サモアは南緯14度でほぼ常夏といえる。気温は25度から30度程度で、降雨量は3,000ミリ以上と多雨であるが、男性的というかサーと降ってはすぐ上がる。治安の良さは折り紙つきで、一部途上国のような緊張感はない。かつて自給自足の経済で、自生の食物(タロいも、バナナ、野菜など)を中心としていたが、今では輸入により簡単に何でも入手可能となり、高カロリーの食物も容易に入手できる。このため近年急速に栄養事情がよくなっているが運動をしないので、巨大で明らかに、成人病かそれに近い感じの人が多い。皆人当たりは良く、裏表がない感じである。いま勤務先の人もどこで会っても、必ず挨拶を交わす。

ここで驚いたのは誰でもタトゥー(刺青)をしていること。成人男性だとほぼ100%、成人女性も半数以上はしている感じである。町の中にそのショップも多数存在している。人々は全く抵抗感がないのであろう。南洋では昔から、勇敢さを示すために刺青をする伝統が長い。それにしても多く、女性までとは驚く。ただ一色(青)が多く、カラフルなものは少ない。

サモアの人口は18万人と小さい。他の諸国も、数万から約670万人(PNG)程度である。ただし、国連ではどの国も一票を持っている点が、日本外交にとって魅力である。規模が小さいので、先進国(オーストラリア、ニュージーランドなど)の信託統治が長い。サモアの独立は62年であるが今でも宗主国との関係は色濃く、勉強や就職などでの人の往来は多い。

地理的な特徴としては、飛ばない鳥が多い点が挙げられる。いろいろな鳥が地面を駆けている。天敵となる動物が少ないので、生き延びたようだ(ダーウインの気持ち)。

  • 日本との関係

サモアに赴任する前はこの地域のことはよく知らず、日本とあまり関係がないと思っていた。ところが、いろいろ調べるとかなり縁が深い。特に第2次大戦において、真珠湾攻撃から、ミッドウェー海戦、トラック海戦、ソロモン海戦、ガダルカナル海戦など、多大なる迷惑をかけたことは確かである。ある期間以上統治した国では日本語を話す年寄りもいるが、心中は複雑である。

11月にミクロネシアでワークショップ研修を行ったが、その際ツーク島を経由して行った。ホテルのロビーに珍しい地図があった。多くの沈没船が掲載されている。何かとよく見ると、日本が一大海軍基地を作り、最後に連合軍に敗れたトラック島とわかった。今では、ダイビングスポットで、日本からのダイバーも多いらしい。実に複雑な心境になった。

  • 地球温暖化

地球温暖化の影響を直接受けているのもこの地域の島々で、人々は実感として潮位上昇を感じている。多くのゴミ捨て場は無計画に海岸近くにあり、この影響を受けている。さらに悪いことには珊瑚礁でできた島をカバーする土がないのである。このため、ハエなどの発生や悪臭で、悲惨な状況となる。日本が出す知恵とわずかな資金援助で、これらの厄介物が減少すると考えられる。

そうした状況での専門家であり、やることに手答えがあることがいい。自分のやっていることが各国で何らかの形で生かされことを望む次第である。

以上

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