『マケドニア・レポート』
在マケドニアJICA投資促進専門家
平野 勝
みなさんはマケドニアがどこにあるかご存知ですか?
マケドニアは南東ヨーロッパに位置し、南はギリシャ、東はブルガリア、西はアルバニア、そして北はセルビアとコソボに囲まれた内陸国です。人口は約200万人、広さは九州の3分の2、ベルギーとほぼ同じという小さな国です。首都はスコピエで人口約60万人、1991年に旧ユーゴスラビア連邦から独立し、マケドニア共和国となりました。
マケドニアというと先ず思い浮かべるのは、かの有名なアレキサンダー大王でしょう。
紀元前356年生まれの大王は、ヨーロッパからエジプトそしてインドに至る世界帝国を樹立しました。マケドニアの首都スコピエの空港はこの大王の名前を冠したAlexander the Great Airportと名づけられています。ただし、実際はとても小規模で少しも「グレート」ではありませんが。
アレキサンダー大王はマケドニアの出身ですが、実はマケドニアとは現在のマケドニアに加えブルガリア西部およびギリシャの東部を含めた地域全体の呼称です。このため、
マケドニア独立に際し、隣国ギリシャは「マケドニアはギリシャの由緒ある地区名称であり、それを国名に使うのはけしからん。」として「マケドニア共和国」の名称を認めていません。このため、マケドニアは国連加盟に際しては「マケドニア旧ユーゴスラビア連邦共和国」という暫定名称で加盟しています。国名問題は現在も解決しておらず、今なおギリシャ‐マケドニア両国間の最大の政治的懸案事項となっています。
現在のマケドニア国民は、アレキサンダー大王時代の住民とは異なる、7世紀後半欧州東部から移住してきたスラブ系の民族です。言語はマケドニア語ですが、ローマ字(アルファベット)ではなく、キリル文字が使われています。最近は英語が広く使われており英語表記も増えてはいますが、街中の看板や商店の店先のパッケージのほとんどはキリル文字表記ですので最初なれないと意味不明で苦労します。砂糖を買ったつもりが中身は塩だったという失敗もありました。ちなみに私の名前はキリル表記では“XИРАНО МАСАРУ”となります。最初は「これほんとに私の名前?」と違和感を覚えますが、慣れると親しみが湧いてきます。
マケドニアの人たちは、とても外国人に親切で親日的です。ただ、どちらかというとシャイで自己主張が下手な国民のようです。勤労意欲は高く皆まじめですが、やや融通が利かないところがあります。外見はまさしく西洋人ですが、気質はどちらかというと日本人に似ているなという気がします。他の西欧諸国に較べると物価も安く、暮らしやすいと言えるでしょう。
マケドニアは旧ユーゴ連邦から独立後、経済危機もあり、現在でも公表失業率が35%と高く平均賃金も月410ユーロ(約5万円強)と低賃金となっています。このためマケドニア政府は、国民所得向上のためには外資導入による雇用創出が必要として外国企業の誘致を最優先課題としています。そして日本企業にも熱い視線を注いでいます。
私が今所属しているマケドニア外国投資庁は首都スコピエの中心部にあります。総人員25名の小さな役所ですが、政府直轄の投資促進機関として外国企業の誘致に積極的に取り組んでいます。マケドニアには日本企業はまだ1社もなくゼロの状態ですが、近い将来多くの日本企業がマケドニアで活躍する日がくることを期待しています。