「メキシコの食」
メキシコ国沿岸水質モニタリングネットワーク計画プロジェクト
長期派遣専門家(水質管理/業務調整) 小島 弘之
メキシコは日本人から見て、比較的なじみのあるラテンアメリカの国ではないでしょうか。
しかし私が現在住んでいるのはメキシコのタンピコという町で、メキシコをよく知る日本人でもあまりなじみのない町かもしれません。ここはメキシコ北東部に位置する人口約60万人の都市で、北にアメリカ合衆国、東はメキシコ湾と接するタマウリパス州最南部の都市です。主な産業は石油工業ですが、約10Km にわたるビーチがあることから、最近リゾート地としても注目を浴び開発され始めています。特に毎年3月から4月にかけてのイースターの休暇時期には、メキシコ国内やアメリカから延べ100万人にも及ぶ観光客が押し寄せるといわれています。
メキシコといえば、日本でもメキシコ料理は馴染み深いと思います。たくさんのメキシコレストランもあり、特にタコスは有名です。タコスは、トルティージャというクレープ状の生地に、様々な味付けをした肉や香草などを挟んだものを広く指します。トルティージャには、主に小麦の粉から作られるトルティージャ・デ・アリーナというものと、主にとうもろこしの粉から作られるトルティージャ・デ・マイスというものがあります。現地の人に聞くと、小麦粉のものはメキシコ北部の一部で食され、中部から南部の多くの地域ではとうもろこしのトルティージャが食されているとのことです。
このトルティージャはメキシコ人には欠かせない主食であり、たとえばレストランに行くと、ほとんどの料理にはこれが付いており、とうもろこしと小麦粉のいずれが良いか聞かれることもありますが、私の住んでいる町では、とうもろこしを好む人が多いように見受けられます。トルティージャは他の料理とともに食べるだけではなく、色々な料理に使われています。例えば、トルティージャが入ったスープ、ソパ・デ・トルティージャ。トルティージャをソースで煮込んだ料理、エンチラーダ。具を入れて丸めたトルティージャ、フラウタをはじめとして、スナックとしてのみではなく料理としても様々なバラエティがあります。また、トルティージャと同じ生地に具をはさみ、とうもろこしの葉を巻いて蒸したタマレスも、スナックや誕生日等のお祝い用としてよく食べられています。
トルティージャだけではなく、メキシコには他にも独特な食べ物が多くあります。サボテンの葉のサラダ、サラーダ・デ・ノパレス。ペーストした豆に豚の油などを混ぜて作るフリホーレスは色々な料理に付け合わされています。またアボカドをペーストして作ったディップソースであるワカモーレは日本人好みのものでないでしょうか。プエブラ地方が発祥といわれるモレ・ソースは唐辛子、チョコレート、木の実やその他のスパイスから作られ、日本人にとっては少し奇妙に感じるかもしれませんが、私も含め、食べ慣れるとその複雑な味わいが好きになるという在留邦人の方も多いです。
酒の話になると、メキシコといえばテキーラを思い浮かべる人も多いと思います。このテキーラですが、現在正式なものは、ハリスコ州原産のブルーアガベというサボテンを一定割合以上含み、国家標準で決められている製法を用いた場合にしか名乗れないことになっています。日本で、テキーラを購入される際は、標準認証であるNOMというロゴがきちんとついているか確かめることをお勧めします。