家族との再会を果たした国~トルコ~
調査部 研究員 生真跡 アルバーリ
生まれてから20歳までシリアで育った私だが、2021年初めて、故郷の隣国であるトルコに行った。目的は観光ではなく家族との再会だったが、せっかくイスタンブール(トルコの首都)に来たのでイスラム建築やオスマン建築を見ることができるモスクに行ってみた。 写真は1551-1557年の間に建てられた、オスマン建築の最高作のひとつと言われるスレイマニエ・モスク(Süleymaniye Camii)だ。
建物の内側も建築技術の美しさを感じる。モスクの中にいると、広い面積のせいか、天井の高さのせいか、モスクは神様の家だと言われているせいか、上手に言葉で説明できないが、自分自身がとても小さく感じ、毎回不思議な感覚を憶える。
イスタンブールにいるなら絶対に見に行かなければならないもう一つのモスクは、アヤソフィアモスク(Ayasofya Camii)だ(下写真)。西暦537年12月27日に開業され、1985年にUNESCO世界遺産として登録 された。アヤソフィアモスクは東ローマ帝国時代に首都コンスタンティノープルで建てられた、現地のキリスト教信者のための正教会だった。現在このモスクは現地トルコ人より外国人の観光客で溢れかえっている。
話が変わるが、2011年に勃発したシリア戦争によってトルコは沢山のシリア難民を受け入れ(現在約360万人)、イスタンブール市内どこを歩いていてもよくシリア方言が聞こえる。シリア難民と言ってもトルコ政府から財政支援がなく、職を探し働いたり、自分の店や会社を立ち上げたりしている人がほとんどである。
イスタンブールのファティ(Fatih)地区ではシリアの物品を扱っている店やレストランばかりのマーケットがあると聞いたので行ってみたら、トルコにいることを忘れるくらいアラビア語(シリア方言)ばかり聞こえて、どの店に入ってもアラビア語が通じた。
2013年にシリアを離れ日本の大学に入学し、その後就職してずっと日本に住んできたが、こんなに沢山の人が母国であるシリアを逃れトルコへ来てほとんどゼロの状態から新しい人生を再開していることに、悲しい気持ちも嬉しい気持ちもあった。
しかし!ファティマーケットで、大好きなシリア・ダマスカスの郷土料理「アッシェ(Asheh)」を食べることができて最高の一日になった。アッシェは作り方が難しく、提供できるレストランも多くない。子羊がメインで使われている料理だが、頭、脳、舌、腹、大腸、レバー、肉、足(ひづめ)まで入っている!アッシェは重くて、油も沢山入っていて、健康的な和食に慣れた私は、一食を食べきれなかったが、とても幸せだった。